第21回 CSRオープンセミナー「放射能風評被害・計画停電におけるリスクと企業防衛」

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第21回 CSRオープンセミナー
「東日本大震災と企業防衛」

「放射能風評被害・計画停電におけるリスクと企業防衛」

講師略歴
株式会社コンプライアンス・コミュニケーションズ 代表取締役
藤井 裕之氏

風評被害(レピュテーションリスク)とインターネット

 日本は非核国ですから、核実験ができません。そのため原発の作業員が被ばくをしても、日本はそれに対応するデータをもっていません。原発にトラブルがあったとき、どう対応するかを誰も突き詰めて考えていないのです。正確な知識、シュミレーション、リスクについてあまり考えていなかったのではないでしょうか。
 「とりあえず大丈夫です」と言いながら、後から「大丈夫ではない」情報が出てくるという負のスパイラルの中では、何を言っても信頼してもらえません。リスクを直視して考えておかなければ、すべては後手に回る対応になってしまうのです。

 現在発生している風評被害の事例についていくつかご紹介します。
 今回の原発事故では、多くの人々が「政府や東京電力は、事故の危険性に関して公表していない情報があるのではないか」という漠然とした感覚を有していたようです。そのため日本では、かつてないほどに人々がインターネット上の情報に依存しだしました。政府はインターネット上の掲示板運営者等にデマ情報を削除することを依頼していますが、この行為が却って疑心暗鬼を増幅させてしまいました。
 フラストレーションの溜まった状態で、ネガディブな情報がインターネット上に出現すると、「やはりそうだったのか」「この情報を隠していたのか」と認識してしまい、情報の拡散がインターネットを通じて一気に進みます。さらに、インターネットで情報を得た人々が周囲の人に話すことで、周囲の人もインターネットで情報収集することの必要性を感じ出します。そのようにして、広範囲に情報が拡散していくのです。

風評被害(レピュテーションリスク)発生の予想・予測

 風評被害の発生について、ある程度の予想・予測は、インターネットの分析から可能といわれています。例えば、2011年3月11日~末日までの原発事故に関するインターネット上での検索キーワードの月間検索回数を比較すると、放射能や放射能汚染の健康に対する意識は日々の食事と同等の高い関心レベルになりつつあるといえます。さらに、放射能の値そのものより、身の回りの物、特に水や食品についての安全性に関心が向いています。 飲料、食品の「産地」についての意識も急速に高まり、製造所固有記号についての情報を共有しあうサイトが出現するなどしています。先手、先手で手を打たなければ風評被害が出てしまう状況です。

インターネット上のレピュテーション対策

 非常時ほど、ネガティブ情報が拡散しやすいものです。企業にとっていわれのない情報の拡散が一度始まると、事業の継続に重大な影響を与える事態に発展してしまう可能性もあります。今回の震災における各種の風評被害の事例を研究し、自社の防衛策を事前に複数パターン用意しておく必要があります。
 では、これらの問題を担当する部署はどこだと思われますか。コンプライアンス、CSR、法務、BCP、情報セキュリティ関連の部署が中心となって行うのが良いのではないでしょうか。ネガティブ情報を会社のコントロール下に置くことが、危機管理対策として重要なのです。
 インターネット上ではブログや憶測記事、メールなど、企業のネガティブ情報が氾濫しています。これを無策のまま放置すると、事実無根の情報が一瞬にして広がり、クライシスとなる可能性を秘めています。さらに、近時のマスメディアの記者には、ブログやツイッター等を巡回して情報収集し、興味のある情報の情報源にアプローチしていくという取材活動形態をとる記者も少なくなく、ネガティブ情報が偶然に記者の目に触れ、マスメディアを通じて情報が拡散するということもあります。対策として、先に情報を収集してコントロールすることが必要です。拡散する前に、正しい情報を発信するのです。隠そうとすると、逆にコントロールが難しくなります。

ICT部分の節電対策の課題と問題点

 バックアップオフィスの設定やサーバの仮想化等を行う際に、セキュリティ面が脆弱になってしまうケースがあります。最近は特にセキュリティの問題は重要で、細心の注意が必要です。
 節電対策は、今後恒久的に行わなくてはならなくなる可能性があります。持続可能な方式を選択しないと、後々苦しくなることもあり得ます。節電対策の実施・不実施が、新たなレピュテーションリスクになる恐れもあるのです。

これからの企業に求められるリスクマネジメント対策

 平常時には、最新のリスクについて想定し、継続的な情報収集が必要です。そのために自社のネガティブ情報の収集ルートの整備、拡充を行い、各種部門間での連携の確認をしておきましょう。
 緊急時には、非常時体制の早急な立ち上げと、メディア対策、レピュテーションリスク対策の実施が求められます。
 インターネットやハッキングの問題等ICT関連の問題も多数発生してきているので、法務関連部署だけでは対応が難しくなりつつあります。これからの企業には、情報システム部門やCSR部門を含めた、トータルな対応が求められています。ですが、全てを一気に解決しようとすると費用がかさんでしまいます。まずは、各種の最新情報を幅広く継続的に取得できるルートを確保しましょう。そしてトータルな判断ができる専門家との顧問契約(クライシス担当顧問等)を締結したり、定期的な勉強会に参加したりする等の方法であれば、より経済的だといえるでしょう。
 ご静聴ありがとうございました。