第19回CSRセミナー「社会的責任の国際指針ISO26000への対応を考える」

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第19回 ダイヤル・サービス CSRオープンセミナー
「CSR取組のいっそうの推進策を考える」
~CSR国際指針の到来を踏まえて~

「社会的責任の国際指針ISO26000への対応を考える」

田村直義氏 講師略歴
株式会社インターリスク総研 コンサルティング第一部
CSR・法務グループ長 マネージャー・上席コンサルタント 田村直義氏

国際規格の概要 ISO/SR26000とは

 ISO/SR26000の原文タイトルは“Guidance on social responsibility”、日本語訳で「社会的責任に関する手引き」とあります。つまり、書かれたものをその通りにやらねばならないという規格ではなく、ガイダンス(手引き)だというところがポイントです。国際規格化の経緯ですが、2001年にCSRの国際標準規格の検討を始めようとしてから、2010年11月の規格化まで長い歳月がかかっています。理由は直接的に関わる関係者だけでなく、NGO、消費者代表など参画するワーキンググループのメンバーの種類を増やしたことと、主要国だけでなく、多くの国が参画しているため、それぞれの国の思惑等もあって、合意形成に時間がかかったのが理由です。
 ISO/SR26000の全体の構成は、序文で第1~3項まで基本的な事項が並び、第4項で社会的責任の原則、第5項で社会的責任の認識及びステークホルダーエンゲージメント、第6項では具体的な課題について列挙されており、第7項でそれを実際に組織に導入するための手法について提示されています。
 特長ですが、日本語の仮訳の状態で100ページ近くと非常にボリュームがあります。企業だけでなく、あらゆる組織が対象であること、また、第三者認証規格ではなく、あくまでも「手引き」であることを強調しています。
 社会的責任を実践するための具体的行動の提示が400項目近くあり、さらに到達レベルの具体的水準(主に国際行動規範)を例示しています。これらは要求事項ではなく、単に例示であることがポイントです。多くのステークホルダーが関与して時間をかけて作成したものですから、普遍性が高く、これまで別個に存在していた規範をまとめたともいえます。企業の皆さまには、これまでの自社のCSRの取り組みを見直し、評価・改善するためのツールなのだという位置づけをご理解いただければ、というのが私からの願いです。

企業のCSR取組事例

 規格化の動向も踏まえ、どんなCSRの取り組みがあるのか、いくつか事例をご説明いたします。

1. 運輸事業者
 CSR活動を開始した1年目に中期的なCSRのグランドデザインを策定、そこに到達するための計画を検証し経営トップの了解を得ました。2年目から、CSRに関するテーマ全部を一度に取り組むのではなく、まずリスクマネジメントやコンプライアンス、それらに近いテーマから手をつけることとしました。また、体制の整備、行動憲章のガイドブック作成による全従業員への浸透を図りました。3年目は研修の実施等で理解を促し、4年目には実際にどれだけ活動がブラッシュアップされたかの評価やステークホルダーとの対話等を実施。このような流れで段階的にCSRの取り組みを進めました。自社のステークホルダーを見渡して当社はこうあるべきだというCSRのビジョンを打ち立て、その実現のための行動計画を作っていく、という基本的なパターンを着実に実践している例です。

2.化学メーカー
 最初の1・2年目は、CSRのブームにのって委員会を設置し、全社的なプランも作ったのですが、活動が展開されない、現場に展開していく方法がうまくいかない、という問題がありました。弊社がコンサルティングを開始した3年目以降は、再度グランドデザインを整備し直し、各部門の業務単位でステークホルダー分析に基づいて事業活動を見直しました。これは、既存の取り組みをCSRの視点から再度見直してより実効的な取り組みにつなげた事例とご理解ください。

3. 食品メーカー
 弊社は当初、危機管理のコンサルティングをご提供していたのですが、2年目以降に行動規範、行動指針を自社CSRの基本的考えをまとめたものと位置づけ、3~4年目にわたって社内に展開しました。行動規範のハンドブックを作り、担当役員が全国の拠点を全て巡回して従業員に説明。その上で、全従業員がCSRや行動憲章と自分の業務とを照らし合わせた上で何が不足しているのか意見を集約しました。経営側から与えられたテーマをこなすというやり方ではなく、全従業員がステークホルダーの期待は何か、それに対して自分達は本当に応えているだろうか、という観点から現場レベルでルーティン業務の見直しを図ることで、経営と現場双方のステークホルダー分析による改善に取り組んだ事例です。

4.商社
 最初に経営トップが取り組みの開始を宣言。それから体制や運営のルール、企業行動憲章や役職員行動基準といったCSRの“バイブル”を整備した上で、部門ごとの取組課題の設定につなげた事例です。課題の設定に際しては、部門内で意見交換をさせた上で役職員の行動基準の中から特に重要なものを選択した上で現状評価を実施しました。その時に全社共通課題を事務局が用意し、それと合体させた上で最終的に部門別の取り組み課題として確定するプロセスを踏みました。

 うまくいくケースには共通則があります。最初の段階でビジョンとアクションプランがきちんと描けていること。本社CSR推進部門が決まった内容を現場に投げるのではなく、現場の力、思考力、アイデアを活かしながら職場の風土を良くする、元気にしていくというような活動を実施していることが成功のポイントです。また、年間のPDCAのプロセスをきっちり実践しながら、ステークホルダーの期待を満たす方向に一歩ずつ進んでいることが見える形で進んでいるところが、お話した4社で共通すると感じています。

CSR取組の要諦

 10の項目に従ってポイントをお話しします。

1.経営トップがCSRの本質を理解する
 経営トップ自身は社内のキーマン、専門家、ステークホルダーと自社のCSRについて議論していただきたい。しかるべき部門の中から選任された人が経営トップに提案することが必要。

2.実践可能な事務局機能を設ける
 CSR推進を確実なものとするため、役割と権限、PDCAサイクルの運用ルールを規定化することが必要。

3.目指すべきCSR像を明らかにする
   自社の現状認識と歴史文化を検証し、CSRコンセプトを検討する。優先順位をつけ、最低限求められていることをしっかり実践した後、個々の課題のパフォーマンスをあげつつ、更に戦略的な取り組みにつなげていく。

4.CSR推進の主体を定める 
 各主体が何をどこまで実施するかという位置関係の整理が必要。

5.綿密な計画を立案する
 年間単位の計画はもちろん、中期的なビジョンの達成に向けた取り組みを整理し、実現可能性のある計画を立案する。

6.行動憲章・規範を見直し、展開する。
 見直しのプロセスに多くの従業員を参画させ、それ自体をCSRの普及につなげる。各部門の課題にブレイクダウンする。

7.CSRの観点から改善・改革・革新する
 ステークホルダー分析を通じて実践する。「ステークホルダーの期待」の観点から既存の取り組みを見直し、必要に応じて随時改善する姿勢が必要。

8.ステークホルダーとの信頼関係を構築する
 ステークホルダーダイアログは有益なコミュニケーションの機会だが、これだけでは接触できるステークホルダーが限定される。自社経営の方針を是正するだけの有益な材料になりうるためには、ダイアログ以外の方法も使って、ステークホルダーの期待を収集することが必要。

9.普及促進する
 従業員向けの社内報やメルマガといった「知識付与・機会創出」を目的にした一方通行のツールに加え、研修や部門内ディスカッション等役職員間のコミュニケーションを通じ「思考力養成・文化醸成」を重視する様々な手法を組み合わせ、自社CSRへの実質的な理解の周知につなげることが大切。

10.チェックとアクションを大切にする
 ISO26000の規格で示されている実践のためのポイントは、CSRのPDCAサイクルの構築を推奨しているのと重複する。立案した計画がどこまで実践・進捗したかを検証し、改善につなげることを確実に実践する。

 以上の要諦10箇条を活用して貴社の取り組みをチェックいただき、CSRの取り組みの更なる改善のためにお役立ていただければありがたいと思います。ありがとうございました。