第5回メンタルヘルスセミナー「職場のメンタルヘルス ストレスや“うつ”からこころを守るためには」

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第5回ダイヤル・サービス メンタルヘルスセミナー
「職場のメンタルヘルス ストレスや“うつ”からこころを守るためには」

「職場のメンタルヘルス ストレスや“うつ”からこころを守るためには」

講師略歴 明治大学文学部教授 諸富祥彦先生

■講師プロフィール
1963年福岡県生まれ。
1986年筑波大学人間学類、1992年同大学院博士課程修了。
英国イーストアングリア大学、米国トランスパーソナル心理学研究所客員研究員、千葉大学教育学部講師、助教授(11年)を経て、現在、明治大学文学部教授。教育学博士。
時代の精神(ニヒリズム)と闘うカウンセラー、現場教師の作戦参謀。
日本トランスパーソナル学会会長、教師を支える会代表。日本カウンセリング学会常任理事、日本教育カウンセリング学会常任理事、日本産業カウンセリング学会理事、日本生徒指導学会理事。臨床心理士、上級教育カウンセラー、学会認定カウンセラーなどの資格を持つ。ホームページ:http://morotomi.net/

心と心のふれあい作り

 大学生のとき、恩師の国分康孝先生(現在、日本教育カウンセラー協会会長)が「心の健康な人とは、心と心のふれあいを楽しめる人のことである。他人と心の交流ができる人は、心が健康な証拠である」とおっしゃいました。
 メンタルヘルスを支える人に一番必要なのは、心と心のつながりです。日頃から人に対して気軽に声をかけるようにすれば、相手も自然に心を開いてくれるものです。心の健康をサポートする人は、心と心のふれあいを楽しめることが必要でしょう。
 人に話してもらおうとするには、相手の話に割りこまないことが大切です。話している当人が、自分の話は聞くに値しないと思ってしまうからです。また、アドバイスもしてはいけません。「それはこうなんだよ」と言ってしまうと、相手はそれ以上自分のことを語ろうとはしなくなるものです。
 相手の心を開くためには、話の内容を膨らませる質問をするといいでしょう。お互いの関係が深まり良好になります。上司と部下の関係でも同様で、自分の聞きたいことだけを聞くのではなく、相手が思ったことを話せるように配慮し、温かい雰囲気作りを心がけてください。

「うつ」と「落ち込み」の違い

 うつは、真面目で自分を責めるタイプの人がなりやすく、他人を責めるタイプはなりにくいと言われています。もちろん程度問題ですが両方のバランスが大事なのです。また、うつは環境が大きく影響します。職場や部署の異動や降格人事はもちろん、昇進したときなどにもうつは起こります。配偶者との死別や離婚など、家族が原因の場合もあります。
 単なる落ち込みとうつとの違いは、生活に支障がでるかどうかなのです。うつになると、人と会うのがおっくうになり孤立していきます。「私なんて生きる価値がない」と思いこみ、気づくと涙が止まらない状態に陥ってしまうのです。
 うつの一番の特徴は睡眠障害です。寝付きが悪かったり、朝早く目覚めたりして睡眠不足になると、脳の血流が悪くなります。うつを悪化させないためにも、この時点で医者へ行き、睡眠導入剤をもらうことをお勧めします。いまは副作用が非常に少ない睡眠導入剤がでています。そのとき、患者の訴えを細かく聞いて、薬を処方してくれる病院を見つけることが大切になります。
 またうつになると、胃の調子が悪くなります。レントゲンを撮ってもどこも悪くないといわれる人が、実はうつ病だったというケースは少なくありません。ある医師によれば、慢性的に胃薬を飲んでいる人の8割がうつ病だったというデータもでています。内科医や胃腸科医にはメンタルの不調について関心を持っていただき、うつ病を疑ってほしいと思います。

後ろ向きの考えを前向きに変える

 責任感の強い人ほどうつ病になりやすいようです。「仕事を失敗してはならない、失敗したら全てが終わりだ」と思っている人が、ちょっと失敗すると、がくんと来てうつ病にかかる場合も多いのです。
 そういった人に対し、カウンセラーとクライアントで話し合いを行い、自分が楽になれる考え方を見つけていきます。たとえば、「失敗しないに越したことはない。でも失敗したからといって、それで終わりじゃない。失敗から学ぶこともたくさんあるんだ」というように前向きな考えに変えていくのです。これは認知療法のひとつで、認知の修正といいます。これにはできる人とできない人がいますが、症状の軽い人はこれでだいぶ改善されます。
 症状が重い場合、「小さいことにくよくよするな」と前向きに考えようとすればするほど落ちこんでいきます。こういう人には認知療法も行います。考え方を変えずにありのままの自分を認めるというフォーカシングの方法です。

心の葛藤から距離を置く

 傾聴はカウンセリングの最強の技法であり、これほど大事なものはないと思います。しかし、「今にも死んでしまいたい。駅のホームにいたら、電車に飛び込みたくなります」という人には、傾聴をするだけにもいきませんので、その場でトレーニングを行います。(※フォーカシングは、クリアリング・ア・スペースといわれている方法です。ジェンドリンのフォーカシング・マニュアルの第一段階で行われる作業で、「空間をつくる」とも訳されています)
 まずカウンセラーとクライアントが二人で立って練習します。「ああ、死にたいなあ」という気持ちが迫ってきたときには、「死にたい気持ちはそこ、私はここ」と置くような動作を取り、体を使って繰り返し練習します。そうすると、死にたいのが馬鹿らしくなってきます。
 勤務時間が不規則、単身赴任が多いなどうつになりやすい条件が多い企業の研修では、考え方だけを紹介するのではなく、実際に死にたい気持ちが出たときの対処方法として、時間をかけてこのような練習を行います。
 ほかにも、「死にたい気持ち」と紙に書いて封をし、神棚に置いてもらうトレーニングもあります。こういった儀式により、死にたい気持ちと自分が少し距離を取れる人もいるのです。

うつ病を予防するために

 うつになると人と会うのがおっくうになります。予防のためには、心許せる人と話をし、リレーション作りを心がけることが大切です。井戸端会議のようなおしゃべりがうつの予防には効果的なのです。男性会社員などは、仕事で落ちこんでも面子にこだわり、妻にへこんでいる姿を見せられないと我慢する人がいます。そんな人が突然うつ病にかかってしまったら大変です。1日5分でいいので、ご夫婦で愚痴や弱音を聞きあってください。

 最後にストレスを溜めないいくつかの方法をご紹介します。
 ストレスをためないためには笑うことが一番です。仲間と一緒に笑えることは、メンタルヘルスによい効果を生みます。ストレス発散できる笑いのポイントは、
1.声を出して笑うこと、2.歯を出して笑うこと。3.手を叩いて笑うことです。
紙をちぎりながら叫ぶのもストレスコントロールによく使われる方法です。

 また、アロマは大脳に直接働きかけるので、ちょっとしたストレスを解消するのに最適です。職場でイライラすることがあったら使ってみてください。ちなみに私は、ローズミントのアロマを愛用しています。
 ストレス対処法、うつの対処法、ひとつでも参考になるものがあれば幸いです。