第17回CSRセミナー「NECにおけるコンプライアンス徹底への取り組み」

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第17回 ダイヤル・サービス CSRオープンセミナー
「NECにおけるコンプライアンス徹底への取り組み」

「NECにおけるコンプライアンス徹底への取り組み」

NEC リスク・コンプライアンス統括部長 中村暢彦氏 講師略歴
NEC リスク・コンプライアンス統括部長 中村暢彦氏

1.NECおよびリスク・コンプライアンス統括部のご紹介

 NECは1899年、米国ウエスタン・エレクトリック社との日本初の外資合弁企業として設立、創業当時は電話機・交換機の輸入販売、製造販売というところからスタートした会社です。ベタープロダクツ、ベターサービスという創業時の営業方針がありました。
 現在、従業員数は単独で24,800名ほど、連結では14万名ほどです。連結子会社が国内118社、海外192社の計310社ありますが、グループ管理という点で、我々が相手にしているのは直接の子会社です。孫会社については子会社がきちっと面倒を見なさいと言っており、直接の子会社というのは国内ではこの半分くらい、海外ではこの3分の1くらいになります。

 私どもリスク・コンプライアンス統括部の業務は、まずNECおよび子会社におけるリスク管理体制の最適化、効率化の推進。次に、不祥事の未然防止、および発生時のダメージミニマム化活動を含めたコンプライアンスの推進。さらに、大地震だとか新型インフルエンザ等自然災害に伴う事業継続プランをビジネスユニットが作ることの支援という業務もあります。また、リスク管理・コンプライアンス推進に関する重要事項を審議するリスク・コンプライアンス委員会という役員をメンバーとする全社委員会がありますが、その事務局業務も行っています。
 大別すると、全社リスク管理グループ、コンプライアンス推進グループ、BCP策定支援グループの3つになりますが、全体では私以下13名というNECの中でも非常に人数の少ない組織です。

2.NECの考えるCSRとコンプライアンス

 NECではCSRを次の4つの責任と考えています。ひとつは企業が存続していくために収益をあげ、利益の社会還元を図っていかなければならない経済責任です。これは企業存続のためのいわば必須項目です。次に、法令遵守や企業倫理の徹底といったコンプライアンス責任も、今や必須項目です。
 3つ目に「よき企業市民として社会的課題解決に貢献」する責任がありますが、これはその企業なりにいろいろやり方はあると思います。NECでは、子どもの理科離れを食い止めるために科学の面白さを伝えるガリレオクラブ、若手起業家育成のためのNEC次世代社会イノベータープログラムなど、さまざまなことを行っています。
 最後に、ステークホルダーとの間のコミュニケーション責任、信頼構築し互いにwin-、winの関係を築くということ。この4つの責任全体がCSRだと言っています。

 コンプライアンスとは、法令遵守はもちろんのこと、社会概念・一般常識まで含めて遵守することです。よく言い訳として、「過去からやっているから」、「他の人もやっているから」、「他部門もやっているから」、「同業他社がやっているから」などの声が聞こえてきますが、そういうものをまず取り除いて、一歩立ち止まって正しいのか正しくないのか考えてみようということ。まるで子どもに言って聞かせるような言い方をしています。

 社内のコンプライアンス推進のキーワードは、「個人としての気づき」、「組織としての情報共有」です。その上で自己改善を図っていくことが必要だということです。
 ずいぶん前ですが、2003年の日本経団連の企業行動委員会で、ある弁護士さんがこんなことを仰有っていました。「企業不祥事はなんらかの法令違反が背景にある。ひとりの人間が法令を全て理解し、判断することは不可能だ。」「事前相談のシステムの確立が重要で、一般には法的センスを磨く程度の研修で良い。疑問に思った際は分野ごとの専門家に相談を」。その言葉を借りまして、「専門のスタッフに相談しなさい」という言い方を社内ではしています。おかしいなと思っても、闇雲に突っ走るのではなく、上司あるいは専門部門に相談していく癖ができれば、コンプライアンス推進は8割方出来ているといえると思います。

3.コンプライアンス徹底への取り組み

 コンプライアンス徹底への取組みとして、日本経団連の7つの要請事項と比較してNECは何をしてきたかということを、特にグループ会社をどうしているかという視点を加え説明します。

① 行動指針
 企業理念、NECグループ企業行動憲章、NECグループ行動規範があります。企業行動憲章というのは「会社」としてあるべき企業行動、行動規範というのは一人ひとりの行動のあり方ということで区分けしています。適応範囲は2007年から国内外の連結子会社全てを対象にしています。

② 担当役員・担当部署等の充実
 全社委員会として役員レベル構成でリスク・コンプライアンス委員会があります。専門部署は、リスク・コンプライアンス総括部です。全社の連絡網ということで、リスク・コンプライアンス推進者体制があります。リスク・コンプライアンス統括部の少人数では、連結子会社を含めた従業員一人ひとりにコンプライアンスを徹底させることは無理があります。従って基本的に社内に関しては事業部単位でリスク・コンプライアンス推進者を1名置き、国内の関係会社においても推進の責任者と推進者を置きネットワークを作っています。
③ ヘルプライン
 ヘルプラインは内部監査部門である経営監査本部の中にあります。1999年NEC行動規範を作り上げたときに最初から入れた制度です。導入するときは役員会でも非常に議論がありました。告げ口を奨励するのかという声も社内外にありました。それからたった7年、2006年に公益通報者保護法が施行されたわけで、正に時代は様変わりです。
 ヘルプラインは作っても、その存在が従業員に知られていなくては意味がありません。この行動規範を作ったときに、わかりやすくマンガ風にした解説ビデオの視聴を全員に促しました。ヘルプラインについても取り上げていました。それでも2年後に「ヘルプラインを知っていますか」というアンケートに対して「はい」というのは3分の1ぐらいしかないのです。相談・申告件数もとても少ない。そのため2006年の公益通報者保護法施行に向けて、あらゆる機会に「ヘルプライン」ということを強く言いました。すると相談件数が倍増しました。今年のアンケートでは認知度は95%に上昇しています。
 国内の上場関係会社は基本的には各社のヘルプラインで対応してくださいと言っていますが、それ以外の子会社に関しては各社にヘルプラインがあっても必ず NECヘルプラインを併記し従業員に徹底させています。特に小規模会社の従業員は相談者が特定される恐れから、自社に相談しづらいという面があるようです。その場合でもその声をNECヘルプラインですくい上げられれば良いと考えます。

④ 経営トップの基本姿勢の社内外への表明と具体的取り組みの情報発信
 2001年から「NEC CSR/ビジネスエシックス」というフォーラムを開催しています。年に一回必ず経営トップのコンプライアンスに関する考え方を自分の言葉で語ってもらいます。加えて外部の方に講演をお願いし、聴講者のコンプライアンス意識の更なる高揚を図っています。対象は幹部会議メンバー、グループ会社も含めたリスク・コンプライアンス推進者ですが、イントラでオンデマンド放送を行っていますのでかなりのグループ会社役員・従業員が視聴をしています。イントラ環境にない会社には人を集めてビデオを見せています。終了後社長の講演内容を英訳して、海外法人トップにも配布しています。

⑤教育研修
 年に一度の必須研修であるNECグループ行動規範のWEB研修や、新入社員研修から新任役員研修に至るまでの階層別教育、さらには個別テーマ毎の教育をテーマによってWEBで行ったり、対面式で行ったりしています。また、イントラにおけるコンプライアンスに関する情報の充実に努めるとともに、紙媒体でも、NECグループ行動規範ケースシート150という冊子の配布を行うなどしています。やはり、根底にある考えは「気づき」と「情報共有」なので、わかりやすいコンテンツ作りはもちろん、コンテンツ毎に必ず相談・確認部門を掲載しています。
 今年の行動規範WEB研修では、NEC本体の受講対象者2万6千名で今現在の修了率は97%。フォロー期間で限りなく100%に近づけていきます。国内のグループ会社に関しても、共同WEB研修をこれから行いますが、現在37社、3万5千名ぐらいが手を上げています。
 上場企業などはコンテンツづくりはそれぞれの会社に任せるものの、行動規範に関する研修は年に1回は行ってほしい、アンケートを使うなどして受講率を必ず取るようにと依頼しています。
 情報発信については当部のホームページに「リスク・コンプライアンスの窓」というものがあります。トップページにアイコンがありまして、それをワンクリックすると、すぐに出てきます。できるだけ階層を深くしないこと。いくら良いコンテンツでも何度もクリックをしなくてはならなくては、自然とサイトを訪れる人は少なくなります。

⑥ コンプライアンスの浸透・定着状況のチェックと評価
 国内外の子会社に対し、年に一度「リスク・コンプライアンスチェックシート」というツールを使い、それぞれの会社の状況を確認しています。期待水準に至っていない場合は、電話等も含めて個別指導をしています。優れた取り組みをしている会社については、年一度開催している子会社を集めた情報交流会で事例発表してもらい、他社の参考にしてもらいます。「同規模の会社の話が聞きたい」というのが子会社に多くある声です。
 個人に関しては、先に述べた行動規範WEB研修に付随し、コンプライアンスに関する意識調査を行い分析・評価を行っています。

⑦ 不祥事発生時の適時的確な情報開示、原因究明、再発防止策実施、関係者の処分
 先に述べたリスク・コンプライアンス委員会では、社内外への情報開示の内容および方法を含む重大な不正行為の原因究明および再発防止策を審議することにしています。不正行為への迅速的確な対応を図るために、事案の有無を確認するために毎月開催しています。国内の連結子会社に関しても、同様の会議体が設置されています。主たる目的はやはり定期的に経営層が不正行為の有無を確認するためであり、毎月NECの委員会事務局へ開催状況が報告されています。
 委員会の決定に従い再発防止策が実施されますが、事案の社内への開示、再発防止教育など多岐にわたります。

終わりに

 繰り返しになりますが、コンプライアンスの推進とは、個々人のあるべき行動として、一人ひとりが素朴に「変だ」という「気づき」の感覚を保持すること、そして「気づき」を一人で抱えず、組織として情報共有して問題の解決を図るということです。また、一人ひとりが自分の意思決定に対してきちんと説明できるか、という視点を持つことが大切です。幹部に対しては、部下は背中を見ているから、まず自分の言動に注意すること。また風通しのよい職場環境を整備することが幹部の責任だということを言っています。
 コンプライアンス推進に関し秘策はありません。信じるところを繰り返し、繰り返し、飽きさせないようにやるしかないと思います。ご静聴ありがとうございました。