第17回CSRセミナー「グループコンプライアンス推進のポイント」

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第17回 ダイヤル・サービス CSRオープンセミナー
「グループコンプライアンス推進のポイント」
~グループ経営ビジョンの実現に向けて~

「グループコンプライアンス推進のポイント」

~グループ経営ビジョンの実現に向けて~

株式会社インターリスク総研 コンサルティング第一部CSR・法務グループ上席コンサルタント 高橋敦司氏 講師略歴
株式会社インターリスク総研 コンサルティング第一部
CSR・法務グループ上席コンサルタント 高橋敦司氏

1.グループコンプライアンスの必要性

 グループコンプライアンスが特に強く求められるようになった契機の一つに、2006年に施行された会社法が挙げられます。
 ご存知の通り、同法では「職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制」(コンプライアンス)を含む「会社の業務の適正を確保するための体制」、いわゆる内部統制システムに関する基本方針について、取締役会で決議し、株主への事業報告で開示することを求めています。そして同法の規定は、当該会社だけでなく、企業集団における内部統制システムも対象としています。
 つまり、グループコンプライアンスを含むグループ内部統制システムについても親会社の取締役会で基本方針を定め、株主にコミットしないといけませんよ、ということが、法律で初めて言及されたわけです。

 では、グループコンプライアンス、グループ内部統制がきちんとできていないとどうなるでしょうか。グループ会社のコンプライアンスがきちんとできていないために、グループ会社で何らかの不祥事・事件が起きたケースを考えてみて下さい。
 まず、当該グループ会社が様々な損失を被ることは想像に難くないでしょう。原因究明・対策協議・広報・再発防止等に関する諸費用、取引先などへの賠償責任、売上の減少などです。
 親会社へのダメージも想定されます。一般に親会社より規模の小さいグループ会社が、上記の損失に耐えられないようであれば、親会社として緊急支援を行うかもしれません。また、親会社が事実関係の調査など、直接対応に乗り出すことで、費用負担を余儀なくされるかも知れません。
 そして、最も怖いのが、「風評リスク」の顕在化です。特に、企業集団内の各社は、共通のブランド名を掲げて商売をしていることが多いでしょうから、あるグループ会社で起こった問題が親会社はもちろん、他のグループ会社における風評リスクの顕在化にもなりかねません。グループ経営そのものに支障を来すことになるのです。

 近年、グループ会社における不祥事が、新聞等で取り上げられるケースも増えています。これはグループ会社の不祥事が急に増えた、というよりも、先に述べたような法律の動向やグループ経営に及ぼす影響等に鑑み、従前よりも親会社が積極的に解決に関与し、情報開示を行うようになってきたことの表れではないでしょうか。

2.基本的な考え方

 グループコンプライアンスの推進にあたっては、様々な課題があると思います。例えば親会社側では、大小多くのグループ会社を抱えており、親会社で全グループ会社を指導するのは大変だ、というお話はよく伺います。あるいは、親会社としてきちんと指導したいが、子会社の実態やリスク情報が上がってこない、ましてや孫会社であれば尚更だ、といったケースもあるように思います。
 一方子会社側はといいますと、自社の業務においてコンプライアンス上の問題があるかもしれない、あるいは既に問題が顕在化してしまった、というときに、自社だけでは解決しづらいということで親会社に相談します。ところが親会社からは、「親子といえども別法人だから、まずは自社で解決しろ」と言われてしまう。また、会社規模が小さく、コンプライアンスの推進を担う実務者が、一人で総務や経理の仕事も掛け持ちしているために、なかなかコンプライアンスに手が回らない、ということもあるかもしれません。
 これらの課題は、結局はその企業集団のグループガバナンスに起因するものであり、個々の施策の中に、こうすれば絶対うまく解決する、という特効薬のようなものがあるわけではありません。
 ただ、これらの課題を前にして立ち止まってしまうのではなく、特に親会社においてグループコンプライアンスに携わる皆様に、ぜひお持ち頂きたい視点を3点ご説明したいと思います。

①親会社がグループ会社における不祥事などの予防の仕組みを講じるのは当然ですが、なおかつ全てのグループ会社においてコンプライアンスが最優先だという風土を作ること。これが親会社に課せられた一番重要な責務であるということです。

②グループ会社において不祥事等が起これば、親会社はもちろん、グループ全体の損失になりかねないことは先ほどご説明の通りです。不祥事はもちろん、不祥事のおそれがある、または不祥事に発展しそうな事象も含めて、事が起こったときは、まず何はさておき親会社に報告しましょう。

③グループ会社で問題が起きたとき、親会社の役員は「グループ会社の問題までは知らなかった」という言い訳ができません。冒頭にご説明したグループ内部統制システムは、グループ会社内の問題を把握する仕組みを作り、現に問題が顕在化したら、親会社の役員はこの仕組みに沿って然るべき対策を講じることを求めています。親会社の役員は「自分は何も知らなかった」では済まされず、むしろ「自分が知ることのできる」仕組みを作っていなかったとして、善管注意義務違反を問われることすらあり得るのです。

 そしてこれを受けて、親会社にぜひ取り組んで頂きたいポイントを3つ申し上げます。

ポイント1.自社グループをとりまいているステークホルダーに対し、親会社がグループコンプライアンスに取り組んでいくことを宣言する

ポイント2.グループガバナンスを確保する

ポイント3.平時・緊急時を問わず「適切な管理」「適切な支援」を行う

3.グループコンプライアンス推進のポイント

 実際に、弊社が過去に企業様に対してご支援させて頂いた経験も交えつつ、いくつかお話をさせていただきます。
 大きくは、平時における不祥事等の予防を中心とした取組、もう一つはグループ会社で何らかの問題が発生した緊急時を想定した取組の2つに分けてお話いたします。
 まず平時においては、方針・ルールや組織体制を定めた上で、PDCAサイクルを回していくということです。このように申し上げると当たり前の話ではありますが、それぞれの取組の中に、色々工夫の余地があります。

 最初に基本的な仕組みやルールですが、様々な業種・業態のグループ会社がある中で、全ての会社に完璧を求めることはできません。自社グループで最低限整備すべきコンプライアンス態勢の要諦を明確化した上で、段階的に底上げを図っていくのが、結果的には近道といえます。
 組織体制については、親会社所管部門のコンプライアンスオフィサーがグループ会社のコンプライアンスについて指導するケースもあれば、「グループコンプライアンス委員会」のような組織を設け、当初よりグループ横断的な取組を志向するケースもあります。特にどちらかが正解というわけではありませんが、先進的にグループコンプライアンスに取り組む企業には、コンプライアンス部門やグループ会社所管部門に、事務局統括機能のみならず、実体的な指導監視機能を持たせていることが共通点に挙げられます。
 その上で、各社において最低限、こういうマネジメントシステムを整備・運用して下さい、というガイドラインを提示し、それに従ってPDCAサイクルを回させることになります。但し、大切なのはむしろその先で、「各社にやりっぱなしにさせない」ということです。例えばA社が策定した計画の内容はどうなっているのか、計画の中でA社が抱える重要な課題がカバーされているか、後で振り返ったときに計画は順調に達成できているのか、達成できていないとすれば何が不具合なのか、他のグループ会社でも参考になる好取組はないか…これらを親会社が計画策定段階、監査段階など様々な段階で把握し、必要に応じて改善に向けた指導をしていく。常に親会社の目が光っている、という状態があって初めて、各社にPDCAサイクルが根付いていくのです。
 教育研修については、なかなか有効なツールがないということで、お悩みの企業様も多いでしょう。そもそも対象者の属性(所属会社、役職など)や趣旨目的(知識付与、思考力養成など)によって、最適な手法も変わってくるのですから、当然のことです。大切なのは、グループの全役職員に対し、常に「あの手この手」を使ってアプローチすることです。そのためにも、教育研修のツールから入るのではなく、まず親会社側で教育プログラムをきちんと考えて、その上でツールにも色々と工夫を講じて頂きたいと思います。
 弊社のクライアントのグループ会社の皆様に研修をすることになり、基礎知識は何回もやっているということで、実際の企業不祥事をグループディスカッションも交えつつ分析評価して頂く研修を実施しました。思考力養成や参画意識の向上を意図したものですが、他社の事例ということもあってか(笑)、とても活発な議論がなされたことを覚えています。

 続いては緊急時対応におけるポイントです。まずは初期の事実確認の段階ですが、重大な企業不祥事であるとの確信がなくとも、その恐れがあると思えば、必ず親会社に報告するということです。「これは大したことはないだろう」「もう少し情報が入るまで様子を見よう」と思っているうちに手遅れです。ワーストシナリオを常に想定したファーストアクションを起こすことが大事になります。
 事実確認結果などを踏まえて、基本方針を決定します。目先の個別具体的な対応策に着目するあまり、「自社が当該事案に対して、どのような基本的な考え方を持って臨むのか」ということが定まらないまま対応に追われるケースは少なくありません。経営層における迅速かつ適切な方針決定を可能とするためにも、進捗は逐次親会社に報告し、早い段階で経営判断を仰ぐことが大切です。ご留意いただきたいのは、第三者意見を参考とすること、それから常に社外のステークホルダーの存在を意識するということです。緊急時では、ともすれば誤った企業の論理に基づく判断してしまいがちですが、上記のとおりご留意いただくことで、回避できるはずです。
 それから対応策の検討・実施については、適切性だけでなく迅速性を確保することです。刻一刻と事態が進行する中、完璧な対応策を追求する余り、実行のタイミングを逸してしまっては意味がありません。
 最後に情報開示となりますが、緊急時における広報対応の経験、ノウハウはグループ会社には乏しいのが一般的です。広報対応は、親会社へ一元化することとし、グループの全役職員にその旨を周知徹底しておくことが大事です。また、情報を「小出し」に開示しようとするケースが見られますが、限定的に情報開示しても、いずれ必ずオープンになることは過去の事例が示しています。限定的開示は隠蔽とみなされかねないと認識し、常に十分オープンするということを忘れないでいただきたいということです。

おわりに ~目指すべき姿の実現に向けて~

 最後に、グループコンプライアンスにおいて目指すべき姿というのを、4つ提示させていただきます。

① 企業集団としてコンプライアンスを重んじる風土が醸成されている。親会社、特に親会社の経営層による率先垂範が不可欠ですし、グループガバナンスの徹底ということが重要です。

② コンプライアンス実践のための仕組みとルールが整備され、周知徹底されている。グループ各社でバラバラに整備するのでなく、グループとして最低限のレベルを確保し、実効性と効率性の双方を追求するということです。周知徹底については、前述の通り、趣旨目的や役職層に応じて、「あの手この手」でアプローチしていくことが大切です。

③ コンプライアンス違反を未然に防止するために適切な対策が講じられている。各社で予防の仕組みを作ることはもちろん大事ですが、グループとして自浄作用を発揮できることも大切です。例えば、これはコンプライアンス上問題はないだろうか、という段階から、親会社に相談できるルートが確保されていることです。もちろん相談窓口が単にあればよいということではなく、相談を受けた親会社が、自社で対策を講じよ、などと対応するのでなく、常にきちんと相談に乗る姿勢を忘れないで頂きたい、ということです。

④ コンプライアンス違反の可能性を認識した後に、迅速かつ適切な対策を講じることができる。現にコンプライアンス違反またはそのおそれのある事態が発生しているというときに、ネガティブ情報は必ず親会社に報告してもらう仕組みを講じておくことです。加えて、報告を受け止めた親会社はグループ会社任せにするのではなく、適切な管理・支援をしていただきたいということです。

 お時間が差し迫ってきたところで、最後に皆様方にお願いです。本日のセミナーを、皆様の中で「ためになった」「参考になった」で終わらせないで頂きたいと思います。特に親会社の経営層の方にも、何らかの形で内容を伝えて頂きたいのです。それがグループコンプライアンス推進の出発点であるということです。長らくご清聴ありがとうございました。