第4回メンタルヘルスセミナー「職場におけるメンタルヘルスの新たな対応」

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第4回ダイヤル・サービス メンタルヘルスセミナー
「職場におけるメンタルヘルスの新たな対応 」
~支える人を支えるセミナー~

「職場におけるメンタルヘルスの新たな対応」

~支える人を支えるセミナー~

講師略歴 講師 大阪ガス株式会社健康開発センター 岡田邦夫先生

1.働く人の健康状況の変化

 厚生労働省の「労働者の健康状況調査平成20年10月」では、約6割の人が仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを抱えていると報告されています。職場の人間関係や仕事量、仕事の質が原因ですが、これをそのまま放置しておくと、心の疲労が過度となってメンタルの不調を引き起こす可能性が高くなります。

 メンタル不調を予防するためには、早期発見や早期治療のために定期健康診断の中で行うメンタルヘルスチェックがありますが、これは二次予防です。メンタルヘルスケアを総合的に進めるには、健康問題を発生させない(一次予防)、病気を早期発見し、早期に対処する(二次予防)、健康問題が発生したときに専門的治療、リハビリ、再発防止策を講じ、復職支援をする(三次予防)を同時に平行して実施する必要があります。

2.社会的不適応 いわゆる「メンタルヘルス不調」の範囲

 最近では、メランコリー型のうつ病だけでなく、職場不適応、新型うつ病といわれる現代型のうつ病が増えています。症状は、上司から与えられる仕事は自分にとって極めて苦痛であり、職場にいると非常に不快な気分になりますが、帰宅後や週末など自分の自由になる時間には現れません。社会的に適応ができない状況に陥っていることが考えられます。

 メンタルヘルスの不調は、一部には本人のパーソナリティの問題でもあるのです。パーソナリティ障害には、妄想性のものをはじめ、統合失調型、反社会性、依存性、強迫性、境界性、自己愛性などさまざまなタイプに分類されています。
 たとえば、プレゼンの前日までがんばっているのに、当日「頭が痛い」といって休むことがしばしばあるような場合は、回避性パーソナリティ障害ということも考えられます。
 また、自分が世の中で特異な存在であり、他の特別なまたは地位の高い人達にしか理解されないと信じる、自己愛性パーソナリティ障害というものもあります。
 そういったケースのなかで、自分が会社に入って長時間労働もなく、特に執拗な叱責やパワハラもないけれども、うつ病、うつ状態になったのは、会社に責任があると損害賠償を求めて裁判を起こす従業員も出てきているのです。

3.メンタル不調に対して企業にもとめられる対応策

 メンタル不調をおこしている人への対応は、前兆、気づき、専門医による治療、休業、補償、復職というステップになります。
 企業にとっては、健康管理、安全管理面で、社員に対しどのような対策を講じるかが非常に重要になります。これを怠りますと、労働災害とか業務起因性の健康障害や、安全配慮義務不履行、不法行為責任などが起き、賠償責任が求められれば、会社に対する従業員のロイヤリティーの低下につながります。会社が従業員に対してきっちり健康管理することを、社内のインセンティブとしてとらえることが必要だと思います。

 従業員の労働損失による金額は高額です。特にメンタルヘルスの問題で労災が認定されると、同時に又はその後民事訴訟として提訴され賠償が問われます。自殺に至ったような事例では、当然1億、2億という賠償金になります。障害者になられた場合には、一生分の介護費用として2億、3億円という金額が請求されることもあるのです。会社は、従業員の健康管理を怠ることなく、きっちりとした対応を取っておくことはいうまでもありません。

4.精神障害等の労災認定について

 精神障害等の労災認定は、業務上で起こっているかどうかという判断基準がポイントになります。厚生労働省の「精神障害等の労災認定について」によれば、精神障害とは、統合失調症や、うつ病等気分[感情]障害、神経性障害、ストレス関連障害、身体表現性障害などをさし、心身症は業務上疾病には入りません。

 業務上の疾病になるのか、そうでないかの判断は、①業務の心理的負荷 ②業務以外の心理的負荷 ③個体側要件について評価し、総合的に判断します。まず、6ヵ月前にさかのぼり、精神的障害を発症させるような心理的負荷があるかどうかを見ていきます。本人のプライベートな問題で精神障害を発病するような心理的負荷がないのか、個体側に脆弱性がないのか、業務内容の心理的負荷も検討します。また、同じ労働者と比べて業務内容が困難で、業務量も多い「相当程度過重」かどうか、日常的に経験する程度の心理的負荷なのか、強い心理的負荷なのかも含めて、業務上の疾病の判断をくだします。
 業務による心理的負荷が強くて、業務以外の心理的負荷がなく、個体側にも問題がなければ業務上の疾病で精神障害が発症したことになります。

 厚生労働省の報告書には新型うつ病については書かれていませんが、司法判断で、新型うつ病に対する判断がすでに出ています。もちろん本人に問題がある場合は、過失相殺され、会社の落ち度は相殺されることになりますが、今後、対応を考えておく必要があります。

5.メンタル不調者への企業の安全配慮義務

一般的に労務を提供する義務と、提供された労務に対して賃金を支払う義務によって労働契約が成り立ちます。そして労働契約の付随義務として、その業務で働いている人の健康や安全が脅かされないようにするのが、安全配慮義務の考え方です。本来は判例法理として、民法415条に決められている債務不履行が適用されます。
 安全配慮義務には、危険予知をする義務と、結果を回避する義務があります。危険予知をしたけれども、結果の回避義務を守らなかった場合には債務不履行になり、損害が求償されることになります。

 健康に対する配慮義務には、具体的な措置が求められます。口頭だけでは結果回避の義務を履行したことにはなりません。たとえば、上司が部下の変調に気付いて「君、顔色が悪いね、健康管理センターへ行って相談したらどうか」と勧めました。しかし、言葉をかけるだけでは、安全配慮義務の結果回避の義務にはなりません。もし本当に具合が悪ければ、「後の仕事のことはいいから、十分な時間をかけて先生に相談しなさい」と、業務を中断させて、時には自分が健康管理室まで一緒についていくところまでやって初めて、結果回避の義務を履行したことになります。

 メンタルヘルス不調で休職した人の最終的な復職の判断なども、上司に委ねられています。メンタルヘルスケアのキーパーソンは管理監督者です。これからは正しい知識を持った対応が必要になるでしょう。

 管理職の方々と産業医のコミュニケーションがはかれると、メンタルヘルスケアがより具体的に実施することができますから、管理職の負担が軽減されることにもなります。判断に困っていることがありましたら、ぜひ産業医・産業保健スタッフに相談してください。自社で対応できない場合には、EAPを効果的に活用することも選択肢として考慮してください。