第13回CSRセミナー「企業倫理を定着させるための取り組み」

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第13回 ダイヤル・サービス CSRオープンセミナー
「企業倫理を定着させるための取り組み」

「企業倫理を定着させるための取り組み」

株式会社アイケイコーポレーション コンプライアンス委員会 事務局長 羽賀康明 氏 講師略歴
株式会社アイケイコーポレーション
コンプライアンス委員会 事務局長 羽賀康明 氏

経営トップ自らの社会へ向けての宣言

 コンプライアンスは、担当者が一所懸命になっても、まずは経営のトップが自ら決断しないと、実はなかなかうまくいきません。経営者が自ら社会的責任を果たす企業として、社会に向かって宣言をすることが大切なのではないでしょうか。

 経営者に託されてコンプライアンスを担当する方は、自らの責任の重さを理解して、そのためには勉強もしなければいけません。かといって敵ばかり作ってはいけないですし、味方をたくさん作らないといけない。
 トップに求められる人柄は、実は企業倫理を推進していく責任者にも求められます。または企業のトップと考え方をひとつにして、一心一体となることが必要です。
 トップを責任者としたきちんとした組織を作り、体系だてて進めていくことが必要です。

当社のコンプライアンスの定義

 当社は、店名はバイク王といって、中古二輪車の買い取りをしている会社です。
 社会的ルール、明示された諸規定の遵守に加え、倫理観が大切だと考えており、コンプライアンスを広義に考え、「コンプライアンス精神」と言っています。「会社として収益が上がること」だけど、倫理的に考えたらどうなのかという思考回路も持っていかないといけないのです。

 会社として宣言し、社内の体制づくりまでは行っても、一番大変なのは全社員への徹底です。
今は大学を卒業して入社した社員にも、倫理観(道徳)教育が必要です。もちろん入社研修でも行いますが、現場で営業を経験しているうちに忘れていきます。

 そのサポートがコンプライアンス委員会の大きな使命だと考え、当社では経営陣や中間管理職であるシニアリーダーおよびリーダーなどが出席する各階層別の会議体に私も出席し、必ずコンプライアンスに関して伝えていく時間をとっています。
とくに当社に関係する法令や、営業形態の中での弱みなどについては、繰り返し皆の耳に残るように話をしていくことが大事です。

コンプライアンス委員会の役割

 古二輪車の買い取りは、昔の質屋に関する法律、古物営業法で成り立っているので、社員には少なくともこの法律は覚えてもらっています。 盗難を防ぐ、盗品を流通させないという規定もこの法律にあります。また、車を利用するので道路交通法などは必須です。

 企業は社会のためにあるのですから、社会の倫理観を社員に植え付けていかなくてはなりません。今たとえば実力40点でも1年間に60点までにしましょうという気持ちでやっていかれてはどうでしょうか。

法令についてのケーススタディ

当社はグループを合わせて社員が700人、平均年齢は29.5歳です。会長は私より15歳年下、社長はさらに7歳年下と、若い経営陣です。
 コンプライアンスは、経営陣と呼ばれる20~30人が理解していても進みません。ボトムアップはとても大事です。 ニートだったり、アルバイトしかしたことのなかった人もやる気があれば採用されて働いている企業なので、「コンプライアンスって何なの? 」から始まります。
 テーマを決めてQ&Aやケーススタディを入れてA4サイズ1枚にわかりやすくまとめ、LANの一番目立つところに掲載し、リーダーである店長は印刷して必ず従業員に配り、朝礼のときに読んでもらいます。
しかしそれだけでは足りないので、コンプライアンス担当の私が、北海道から沖縄までの87店舗全店を1年間かけて回り、スタッフと顔を合わせてコンプライアンスについて語り合います。

 いくら社内の風通しがいいといっても、一般社員がいきなり経営者には物を言えないので、橋渡し役も大事な仕事です。現場の意見や質問を持ち帰って経営サイドに話をし、取り入れていけるものならば、取り入れていきます。

コンプライアンス精神の浸透度の確認

 コンプライアンス精神の浸透度を検証するために、1年間に3回「コンプライアンス知識確認テスト」を実施しています。100点満点で、60点分はQ&Aとケーススタディです。残りの40点は当社のコンプライアンスや内部通報制度などについての知識の確認です。
 毎年買い取るバイクが13万件以上なので、個人情報が年間13万件以上発生していることになります。 その細かなルールや法令など知らないと困るポイントについて出題します。今期は2回実施し、1回目の平均点は65点、2回目は70点でした。

 試験をすることで皆の気持ちがコンプライアンスを考えるところに立ち戻り、それぞれの組織内でも学ぶ時間を設けるようになってきているかと思います。

コンプライアンスの研修と誓約書

 当社では入社時にコンプライアンス研修を行っていますが、当社の社員として絶対にやってもらいたくないことを絞り、誓約書をもらっています。 「企業倫理、コンプライアンス精神発揮の重要性をよく認識して、法律および会社の諸規定、社会規範を誠実に遵守して業務を遂行すると共に、下記項目に該当する行為は一切行わないことを固く誓約いたします。さらに下記に該当する行為を行った場合は、懲戒解雇を含む厳罰に処せられても一切異議は申し立てません。」

 中古バイクの買い取りにはさまざまな書類がついてまわります。
大型バイクには所有権が付いています。ローンがまだ残っている場合、所有権を解除するためには捺印が必要です。
当社では登録印鑑の偽造や変造をしてはいけないと誓約書に謳っています。Q&Aやケーススタディの事例でも、刑法ではどんな罪にあたるのかを教えています。また、お客様が脅迫的に感じたり、恐怖心を与えたりする言動やセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントをしないことなどを入れています。

反社会勢力との関わりを持たない

 反社会的勢力との関わりを一切持たないためには会社や経営者の姿勢も大事ですし、警察の協力を仰いだり、弁護士に相談したり、あらゆる方策を使い排除していくことが大事です。当然そういう関係者には社員になってほしくないのですが、なかなか見破るのが大変です。 ですから入社のときの誓約書には、「現在まで反社会的勢力との関わりは一切ありません。加えて今後も一切の関わりを持ちません」と入れさせてもらっています。

コンプライアンス委員会に設けた部会

 ホットライン部会 企業倫理ホットラインについてより皆に知らしめ、活用を促します。
内部通報があった場合には、会社をどのように変えていくか、再発防止策などを考えます。 交通安全部会 現在、全国87拠点で、お客様のところから買い取ったバイクを運ぶために、2.5トン車の220台くらいのトラックが走っています。 当社の社名と電話番号が書いてある車でのスピード違反や乱暴な運転、飲酒運転などが起こらないようにします。以前は運転マナーを破り、事故につながることがありましたので、交通安全部会では事故を減らし、運転マナー向上のための取り組みをしています。

 衛生管理部会 社内の分煙や禁煙の勧めにも取り組んでいます。
今、企業で鬱病になる人がとても多いです。当社でもあります。企業倫理のひとつである社員を大事にするためには、メンタルヘルスも大事です。

 個人情報の管理が完全に定着するまでには、個人情報部会というものもありましたが、現在ではなくなりました。 部会の活動の目標は、3ヵ月をひとつのサイクルとしています。定着させるためには、四半期で目標を立て、そこで1回閉めて振り返ることを繰り返した方が、当面は有効に進めていけると思います。

内部通報制度への取り組み

 内部通報制度は、経営トップがよしとしない限りうまくいきません。 当社のホットライン部会は強い権限を持っています。外部の弁護士も入っています。

 本来ならば監査役がガバナンスとして経営者に言わなければならないのかもしれませんが、ホットライン部会は経営者にも監査役にも意見を提示いたします。企業のエゴはなかなか収めることができないということでしょう。

 本来社会のためにある会社なのですから、担当者が会社のために現場の声として提案したことが経営に反映されないというのはおかしな話です。それが言える組織であるように、経営トップにも腹をくくってもらうことが大事なことではないでしょうか。

外部設置の通報窓口成功の理由

 当社ではコンプライアンス委員会を立ち上げる前に内部通報制度を作りました。 顧問弁護士か、社内は私宛に郵送する方式でしたが、1年経っても1通も来ませんでした。

 100点満点の会社ではないのに、何も通報がなかったため、経営者の理解を得て外部の通報窓口を設置しました。郵送方式は、筆跡から通報者がわかってしまうので敬遠されると聞き、電話やWEBでも利用できるようにしました。

 思ったときにすぐ行動に移せるようにいろいろな通報手段を用意しておくことが大切です。
また、企業倫理ホットラインの連絡先を書いた小さなカードも作りました。当社にはこのほか、コンプライアンスのセルフチェックシート、心身の健康管理のためのヘルスラインのカードがあります。各自社員証を入れるホルダーに入れておき、思ったときに連絡できるようにしています。

 マスコミや行政官庁への告発を防ぎ自浄作用を発揮しなくてはいけないのです。 大事になる前に社会のためにいい会社にしていこうという経営者の下ならば、企業は自浄作用をいくらでも発揮できます。 そのための大事なツールがこの内部通報制度だと思います。当社では外部通報制度について会議体で何度も告知しました。コンプライアンス確認テストでも出題をしています。

 一従業員にとっては、通報はある意味命がけなのです。公益通報者保護の法律ができたといっても、完璧ではありません。 もしかしたら今の身分がなくなってしまうのではないか。会社に盾をついていると思われるのではないかなどと思われたら、この制度は機能しません。 内部通報にかかわるホットライン部会のメンバーは、担当者にはニュースソースは絶対に明かさない、特別守秘義務を負っているという強い姿勢が必要です。信頼感がなかったら、絶対に通報して来ないと思ってください。

フィードバックについて

 匿名でも実名でも、心ある従業員から会社にいただいた情報です。何を言おうとしているのかをよく読み取り、十分に調査を進め、フィードバックを進めることが大切です。

 実名で告発する人は、責任感の強い人です。実名通報の場合は、全国どこでも通報者の都合に合わせて会いにいき、「どんなことをしてもあなたを守る」と宣言して話を聞きます。そうすれば細かな内容まで話してくれます。寄せられた情報はホットライン部会で検討し、再発防止策を考えて経営陣に話をし、ご本人にフィードバックします。

全社で共有化することが必要だと判断した場合には、LAN上に情報を掲載します。ニュースソースは守った上で掲示しますが、部署がわからないようにすることが重要です。 決して通報の犯人探しをすることにならないよう、守ってあげるべきところを間違えないようにしてください。担当者は体を張って阻止する覚悟が必要です。

コンプライアンス対応に必要な条件

危機の芽はいろいろなところに転がっています。
 通報する前に、思い違いや自分の間違いかもしれないから、相談ですと言って電話をかけてこられる方もいます。そういうところにも危機の芽はあります。内部通報のためには、あらゆることを相談できるような社内の風土づくりや現場との信頼感を築くことが必要です。

 担当者はそれだけ大事な部署に携わっているのだからと自分に言い聞かせてください。

いろいろな情報網を構築しておく必要もあります。
「見ざる、聞かざる、言わざる」は日本人のいいところでもありますが、一方で悪いところでもあります。 これからの企業は透明性の確保が必要です。 見ていて言わないことから脱却する必要があります。 通報しなかったら、言わずの罪だとコンプライアンスの中で規定してはどうでしょうか。  経営者を動かすのは、担当者の力量です。
反応や答えはなかなか出てこないかもしれませんが、使命感と熱意を持って、愚直なまでに続けていくことが大切だと思います。