第13回CSRセミナー「CSR」(リスクマネジメント)のしくみとコーポレートガバナンス

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第13回 ダイヤル・サービス CSRオープンセミナー
「CSR」(リスクマネジメント)のしくみとコーポレートガバナンス
~広報コミュニケーションの視点から~

「CSR」(リスクマネジメント)のしくみと
 コーポレートガバナンス

~広報コミュニケーションの視点から~

講師 BERC専任講師 萩原 誠 氏 講師略歴
講師 BERC専任講師 萩原 誠 氏

歯止めがかからない企業の不祥事の発覚

 2007年は食品偽装が次々に発覚した年でした。
 赤福、白い恋人、崎陽軒……。 これらの企業はおそらくCSR活動をやっていなかったと思います。
実際、CSRはこれまで大企業を中心に取り組まれてきましたが、これからは中堅企業、中小企業にも避けて通れない課題なのです。 また、最近の企業不祥事の発覚は、ほとんどが内部告発によるものです。
 もちろん、マスコミへの内部告発は以前からあったわけですが、ニュース価値がないということでマスコミが取り上げないことが多かったのです。 いまは、不祥事に世間の関心が高まっており、マスコミは直ぐに報道しますから、不祥事が隠せない時代になったのです。 まさしく、情報公開や説明責任に消極的なこれまでの日本的経営のあり方を問われているわけです。

 最近、多発している企業の不祥事はそのほとんどが法令違反によるものです。
会社にとって、できれば隠したい、あるいは大きな問題ではないとして公表しない小さな(つもりの)不祥事も、外部に知れたときに大騒ぎになるということを、そうなる前に予見することが重要なのです。 この事故や事件を公表すべきかしなくてもいいか、公表するとすればいつ、どのようなに公表すべきか、また謝罪や責任のとり方や再発防止策をどうすべきかを決めて、全てを誠意をもって対応すべきなのです。 最近、業界ぐるみの再生紙偽装が発覚しましたが、今までのように、みんながやってるからとか、これまでやってきたからという考え方は業界団体としても変えていく必要があります。

企業の社会的責任は時代によって変わる

 日本でCSR(企業の社会的責任)という用語が使われるようになったのは2000年代に入ってからです。
品質規格や環境規格と並んで、CSRを国際規格にしようとするISOの動きに呼応したものでした。 大企業でCSRを推進する組織が次々に設置され始めたと言う意味で2003年がCSR元年、翌2004年はマスコミもCSRを大きく取り上げたという意味でCSRブームの年と呼んでいます。

 それまで日本の大企業は主として「環境問題への対応」を社会的責任の重点テーマにしていましたが、CSRの導入によって、環境問題だけでなくコンプライアンス、情報開示・説明責任、適正な取引、幼児労働の禁止やNPOへの対応など「社会的責任の範囲」が一段と広がったのです。
 その一方、すでに2000年ごろから、外人投資家持ち株比率の高かった一部の大企業では、コーポレートガバナンスの観点から今で言うCSRに取り組んでいる企業もありました。 株主に対する情報開示やコンプライアンス(法令順守)をきちんとしておかないと株主に説明がつかないという問題意識によるものでした。 富士ゼロックス、資生堂、オリックス、NEC、帝人などの先進企業です。

 従来、暗黙のうちに従業員主権でやってきた多くの日本企業で、「会社はだれのものか、会社はこれからどうなるか」という論議が急に活発になったのが、CSRが日本の大企業の中でブームになった2003年、2004年ごろでした。
 その後、その議論は発展して、2006年に出版された『誰のための会社にするか』(ロナルド・ドアー著/岩波新書)で指摘された「会社は社会のものだ」という考え方が経済界の主流になりました。
 企業は顧客、従業員、株主だけで成り立っているわけではないという考えです。
まして、株主最優先のものではない、という考えです。大企業は言うまでもなく、中小企業も含む全ての会社が、「企業は社会の公器」という視点で、自分の会社を見直し、変えるべきは変えていく決断を迫られているのです。

CSRの行き着くところは企業理念

 企業の社会的責任の重点の置き方は時代によって変わります。
 また大企業だけでなく中堅企業や中小企業もCSRに取り組まなければなりません。 もちろん企業によって社会的責任の何に力を入れるかは違います。 従業員の雇用を守ることに力を入れる企業や下請企業の安定化に力を入れる企業もあるでしょう。 これらの重点の置き方はトップが判断することになります。 CSRは人から言われてやるものではありません。 自ら考えてやることがCSRの基本です。  CSRの根本には「企業理念」や「創業の精神」あるいは「社是」があります。
CSRを推進する制度がない企業でも、企業理念や社是社訓のない会社は無いはずです。 CSRを推進するためには、企業理念や社員の行動指針など、経営のあり方そのものを見直す必要があります。 多くの企業には、明文化されていなくても、倫理的な行動の慣習や、社員行動の手引きなどがあります。 いい意味でも悪い意味でも「会社の掟」みたいなものがあるはずです。 CSRは、これらを見直してブラッシュアップするだけでなく、最低限の制度設計や文書化の必要があります。 内部通報制度、倫理委員会、倫理監査制度、モニタリングなどがそれにあたります。 社員がどういう意識を持っているか。外部の方が自社のコンプライアンスをどう評価しているかを知ること。 教育研修を、どうするかなど、CSRを推進するための現状の分析や見直しをすべきです。 こうして身の丈にあったCSRを進めることが、企業の次の原動力になるのです。

日本企業のCSR上のこれまでの決定的な弱点

 不祥事を起こした会社にも立派な理念や創業の精神、社訓はあるのでしょうが、形骸化したのでしょう。 企業活動の情報開示が、日本の場合少ないのです。
 どんな規模の会社でも広報活動はきちんとやらなければいけません。
社長が自ら広報マンとして自分の会社の経営戦略や社会的存在理由を発信しなければいけません。
従業員の一体感を高める社内広報も非常に重要になっています。
もちろん、上場会社では、株主の期待に応えていくことも重要です。
 いまでも日本の企業は株主や投資家に十分情報開示しているかというと、いささか疑問です。
情報開示や説明責任を果たすことが嫌だったら、オーナーが全部株を持って上場を止めるしかありません。
労使一体、従業員主権(幻想ではあっても)型の「会社共同体型経営」を、基本的には変えない方が良いと思いますが、自分の会社が社会でどういう位置付けにあるかを把握することは避けて通れません。

 日本の経営者の中にはいい商品を販売してお客が買ってくれてること(=本業)が社会貢献だ、と断定する人もいますが、本業を行うことだけでは「社会の公器」ということにはなりません。 内輪の論理で何事も判断するのは日本の組織に共通する弱点です。
あなたの会社の常識は世間の非常識であるかも知れません。
世間の情報を十分に集めておかないと、どこが非常識なのかがわかりません。
業界団体の中でも、社長さん方が自分の会社のことだけでなく、業界全体のあり方(社会的責任)を考えなければいけません。

 2003年3月に経済同友会が発表した第15回企業白書「市場の進化と社会的責任経営~企業の信頼構造と持続的価値創造に向けて」は、すばらしい提言だと思います。これからはアメリカ的株主重視経営の行きすぎはまずいと議論し、企業戦士的ライフスタイルへの反省と、ワークライフバランスが提言されています。 派遣社員や現場もよく見なくてはいけないのです。 これが最終的に考える日本の企業の社会的責任です。

CSR経営の必要・十分条件

 まず一番目は、トップのリーダーシップですが、有能なリーダーに限ってワンマンの場合も多いのです。 そのワンマンの弊害を補うのはトップの人柄です。
 少なくとも社員の8割方が、ワンマンであっても人柄が信頼できるトップであって欲しいものです。
二番目は経営戦略です。
大会社でも結構多いのですが、経営戦略が曖昧な企業はCSRもおかしくなります。

三番目が企業風土です。
この企業風土くらい重要なCSRの条件はありません。
企業風土は次の5つが揃って初めてCSRが実行できます。まず、透明性です。
いわゆる風通しのいい企業の風土のことです。
次に人を大事にする経営です。 偽装請負をしている会社は人を人と思っていない経営ということができます。
四番目に誠実性(インテグリティ)です。
誠実と言うことは相手に信頼を持たせます。
五番目にコンプライアンスです。
法令を守る、倫理的な行動をとる、社会規範を守る、常識に合った行動を取るということです。
最後に、誇りと使命感にあふれる人が多いということです。
どんな会社でも、従業員の全てが自分の仕事にそれなりの誇りとやりがい、そして自信を持てることはトップの責任です。

3つのマネジメントシステム

『コーポレートガバナンス』
監査役がきちんとしている。
社内監査もきちんとモニタリングしているかということです。
株主総会もシャンシャンばかりではいけません。
『コーポレートコミュニケーション』
  広報コミュニケーションについては、マスコミ対応は一部の手段であり、ステークホルダーとのコミュニケーションのバランスをいつも考えておきます。
逆に欠けているのは、インナーコミュニケーション、従業員、とくに非正規社員とのコミュニケーションが重要になっています。
従業員の考えを把握するのは、現場の責任者の仕事です。
今、飲み会だけでなく社内運動会や部内旅行が復活しています。
職場の組織の信頼関係を築き、一体感を作ると期待されています。
『コーポレート・リスクマネジメント』 
企業が抱えるリスクには、戦略リスク、財務リスクなどいろいろあります。
自社の「リスクの洗い出し」を継続的に行って、組織で周知することが重要です。
その上で、PDCAサイクルをきちっとまわすことが必要です。
事前防止の危機管理(社内告知の徹底)が有効です。
不祥事が起こったり、外に出ないためのひとつの手段です。
また、危機発生後の危機管理(ダメージコントロール)、再発防止の危機管理(説明責任の徹底)も大切です。

リスクマネジメントの一部にクライシスマネジメントがあります。
いざ不祥事が起こったときの謝罪会見など、企業イメージの損害を最小限にするコントロールのことです。
今、電通PRやシンクタンクなどがメディアトレーニングを行っています。
マスコミ対応の謝罪会見などだけがリスクマネジメントの主流ではありません。
広報を担当する方は、リスクについて勉強してください。

起こったことについて、いかにダメージを少なくするか。
マスコミから信頼される情報開示などの行動が7割、3割が誠意ある謝罪です。
石油温風器回収のコマーシャルをテレビで連日流した松下電器に対しては、ほとんどの方が「松下電器はよくやった。信頼できる会社だ」というイメージを持ったようです。
実は社長は謝罪をしていないのですが、会社から見れば立派なリスクマネジメントだったと評価できます。

CSR推進体制と広報コミュニケーション

 事前防止の危機管理(社内告知の徹底)が有効です。
不祥事が起こったり、外に出ないためのひとつの手段です。
また、危機発生後の危機管理(ダメージコントロール)、再発防止の危機管理(説明責任の徹底)も大切です。

リスクマネジメントとクライシスマネジメント

 最後にCSR経営とリスクマネジメントの失敗例では、船場吉兆の例があります。
これで吉兆のブランドイメージが落ちたのは確かです。
広報関係者の今も、むかしも、不祥事発生後の三つの戒めがあります。

「隠さない、ウソをつかない、逃げない」 です。
みんな肝に銘じているはずなのですが、いざとなるとこの三つのどれかが破られてしまうのです。 船場吉兆は、見事にこの三つの戒めを破ってしまいました。 かけがえのない「暖簾」は、こうして消失してしまいました。 みなさんの会社も(次々に留まるところを知らない)他社の悪い事例をお手本にして、自分の会社だったらどうするのか勉強してください。

CSR推進体制と広報コミュニケーション

最後にCSR経営とリスクマネジメントの失敗例では、船場吉兆の例があります。
これで吉兆のブランドイメージが落ちたのは確かです。
みなさんの会社も、中小企業も含めて他社の悪い事例をお手本にして、自分の会社だったらどうするのか勉強してください。

まとめ

 企業の社会的責任は自分の会社が決めるものです。
そのためには、リスクマネジメント、コーポレートガバナンス(企業投資)のしくみ、広報コミュニケーション、ステークホルダーなど、いろいろな利害関係者とのコミュニケーションの優先度をどう決めるかが大切です。
一番大事なのは、企業のトップがどのように考え、企業風土をつくっていくかだと思います。
みなさんの会社もすべて社会のために存在しています。
今自分の会社は何を一番優先と考え、社会的責任を果たさなければならないか、しっかりとコミュニケーションを取りながら考えていくことが必要とされています。